与信調査や与信審査といった与信管理業務における、想定される業務課題とその対策について考えておきましょう。
企業が新しい取引先とのビジネスを検討する場合や、現在の取引先との関係を再評価する場合には、まず取引相手の財務健全性を確認し、将来的な売掛金の未回収リスクを考慮する必要があります。こうした対応を行う与信管理は、企業にとって不可欠です。
しかし、与信管理では様々な業務課題が発生することもあるため、まずは与信管理の担当者が直面しやすい課題や問題点を把握しておかなければなりません。
一般論として、与信管理に関する体制が十分に社内で構築されていないといった企業は少なくありません。
例えば、新しい企業との取引を検討する際に、その取引によって得られるメリットや担当者の人柄だけに意識が向いてしまうことがあります。すると、客観的な財務データや経営状態の調査・審査が行われないケースが生じます。こうした状況は、日本国内の企業においてしばしば見られます。
また、与信管理を担当する部署や責任者を設けていない企業も見受けられます。
どのような企業や事業であっても、様々な要因によって経営が悪化したり生産性が低下したりする恐れがあります。そういったリスクへ対処するためにはまず与信管理体制や与信管理業務についてしっかりとした環境整備をすることが重要です。
根本的な与信管理体制の不備は、中小零細企業によく見られる課題です。一方で、大手企業など取引先の多い企業においては、取引先が多すぎて社内の与信管理担当者だけでは十分な与信調査や与信審査が追いつかないといったケースも想定されます。
現実問題として、大小様々な取引先が数百社に及ぶ企業の場合、すべての取引先に対して均一の与信管理を実施することは困難であり非効率的です。したがって、まずは与信管理レベルの設定や業務の優先順位を検討する必要があります。
ビジネスでは「パレートの法則」や「80対20の法則」と呼ばれる考え方があり、これは「企業の売上の8割は、顧客全体の2割から得られる利益で構成される」というものです。
つまり与信管理を注力すべきは「売上を左右する2割の大口顧客」となり、まずは自社にとって重要な取引先の分類を行った上で、対応可能な業務範囲と精度を考えるようにします。
多くの企業に見られる与信管理業務の課題のひとつに、「与信管理を行っているつもりになっている」という状態が挙げられます。与信管理はリスク管理の1種であり、リスクを分析するためには最初にしっかりとした評価基準や判断基準を設定しておかなければなりません。
しかし、その前提を曖昧にしたまま変動する数字や取引先との関係に一喜一憂したり、イメージによって取引先の評価を決めてしまっていたりする企業や担当者が少なくありません。
その他、特定の担当者の勘や経験に頼り切った与信管理のような属人性の偏りもリスクとなります。
与信管理体制を構築する一環として、まずは与信管理の基準となる数値や条件を設定し、取引停止や格下げを判断するための与信管理規定を整備しましょう。
与信管理は人間の勘に頼るのでなく、あくまでも基準とデータを比較して客観的に分析することが大切です。また気持ちとして信頼できる取引先であっても、定期的に信用情報の収集や調査を実施し、与信管理規定と照合して問題がないかチェックするようにします。
日本のビジネスパーソンに見られる特徴として、数字やデータよりも「気持ち」を重視する傾向があります。しかし気持ちに依存しすぎて性善説や勘による経営が事業展開を主導してしまうと、思いがけず大きなトラブルに直面するリスクが増大します。
そのため、社内全体で与信管理に対するマインドや信用情報リテラシーについて改めて意識共有を行い、コンプライアンスを含めた業務基盤を整えなければなりません。
与信管理をすることは取引先を信用していないからでなく、自社と取引先の関係を大切にし、また将来的に取引先との事業を守るためにも、与信管理が不可欠であるという意識を社内に浸透させてください。
加えて情報管理に対する社内研修を行い、セキュリティリスクやインシデントに対するリテラシーを向上させることも大切です。
与信管理は客観的かつ論理的な運用によって成立する業務ですが、これまで与信管理規定を設けていなかったり与信管理体制が不十分であったりする企業にとって、直ちに社内で十分な与信管理を行う環境を整えることは困難です。
そのような場合は、債権管理システムの導入といった施策により、業務の効率化や属人性の解消を図ることも、有効な対策のひとつとなります。まずはどんなシステムを導入すべきかを含めて専門家へ相談してみましょう。
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