本記事では、与信調査について、わかりやすく解説しています。調査の目的や実施方法、そして調査ポイントなどをまとめました。正確に与信調査を進めるためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
特定の取引相手である法人について、信用状況をリサーチすることを、与信調査といいます。「信用調査」と呼ばれることもあります。信用してもよい取引先であるか否かを確認しておかないと、特に商品の代金が後払いの場合などは、未回収金が発生するリスクがあるため、与信調査を実施することがあるのです。
取引先の企業を直接調べる直接訪問やインターネットによる情報調査、あるいは第三者である信用調査会社への依頼など、さまざまな調査の仕方があります。
取引先が経営的に問題のある状態になり、すでに渡してある商品の代金が未回収の状態になることを「焦げ付き」といいます。焦げ付きが起こった場合に、次のような事態に陥る可能性があることをふまえると、与信調査がいかに重要であるかが分かります。
焦げ付きが起こると、損益面に影響が及ぶため、利益の維持が難しくなります。利益率1割の取引であった場合、仮に1千万円焦げ付いてしまうと、損失分を埋めるには1億円(=1千万円÷1割)の売り上げを、新規で上げる必要が生じます。また、決算もダメージを受けるため、業績悪化をも招きかねません。
また、資金繰りの計画が狂ってしまうこともリスクといえるでしょう。企業経営においては一般的に、通常取引先からの入金分を、別の仕入れ先への支払いなどに充てる場合が多いです。ですから、1千万円の焦げ付きが未回収になると、その分を別の所から捻出しなければならなくなってしまいます。
このようにして資金繰りが滞り、仕入れ先への支払いができなくなるなどの懸念が生じます。
内部調査とも呼ばれることがあります。与信調査を本格的にスタートするまえに、できる範囲で自社内で調査を実施する方法です。過去に取引がある企業ならば、当時の取引履歴や取引資料を参考に、信用情報を得ることが可能です。
経理部や営業部などに蓄積している情報を調べてみるのも、ひとつの方法です。なかでも、当時の取引の担当者であれば、より豊富な情報を持っている可能性があります。面談やヒアリングを実施して、できるかぎりの信用情報収集に努めます。
取引先の企業まで足を運ぶ訪問調査や電話・メール・FAXを用いた調査などが、直接調査に該当します。取引先が遠方にあるケース、あるいはこれまでに何度も訪問しているようなケースでは、さらに何度も足を運ぶのは効率が悪いかもしれません。ただ、訪問調査であれば、自分の目や耳を使って調べられるので、より多くの情報を得やすいというメリットはあります。
けれども、直接調査をされる側の企業が、こちらが強い疑いの目をもって調査しているのではないかと受け取る可能性もあります。そうなると、それ以降の取引がスムーズに進まなくなってしまうリスクも否定できません。
外部調査のひとつが、官公庁の公開情報を利用する「官公庁調査」です。商業登記簿および不動産登記簿を法務局で閲覧することで、商号や本社所在地の変更の有無や頻度、滞納の経緯、債権譲渡や質権の設定、動産譲渡などの登記設定、抵当権の状況ほか、さまざまな情報を得ることが可能です。
ふたつ目の方法が、ウェブサイトの閲覧や企業情報データベースの検索による「検索調査」です。公式HPなどに掲載されている決算報告やIR情報、役員の人事異動の有無なども、大切な調査資料となります。
そして3つ目が、直接調査と併せて実施する「側面調査」です。直接企業へ訪問した際に得た情報の信憑性について確認するための調査です。情報源となるのは、たとえば、調査対象企業の別の取引先であるほかの企業や銀行、住所のあるビルのオーナーなどです。
自社では充分な与信調査ができなさそうであると判断した場合の選択肢として挙げられるのが、依頼調査です。企業調査を専門とする調査会社などの第三者に、調査の実施を依頼する方法です。この方法であれば、直接調査では収集が難しい情報を得ることもできます。ただ、場合によっては企業の情報交換のみにとどまることもあるため、注意が必要です
好感を持つことのできるような取引先であったとしても、売掛金を支払うだけの収入がなければ、ビジネスとしては成立しません。滞りなく支払いができる売上収入をキープできているかどうかを、しっかりと調査する必要があります。売上の推移や受注状況、資金状況、在庫の過剰な増減、従業員の行動などが重要な情報源となります。
ビジネスにおいても、個人的な付き合いと同様、相手の人柄の良さは大切な要素です。もちろん、明確に数値化できるデータが重要であることは言うまでもありませんが、数値のみを調査しても判断しにくい部分が残る場合には、経営者の人柄やこちら側の感情や感覚などを判断材料として加えるのも、ひとつの方法です。
資産状況と財務状況を詳細に調査しておくことも大切です。「返済に充分な原資の有無」「いざというときの借入において担保となる資産の有無」「金融機関による差し押さえの有無」などについては、必ず確認しておく必要があります。資金繰りに不安要素がある企業との取引は、非常にリスキーだからです。
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