この記事では、滞留債権の概要を説明しています。滞留債権が生じる原因や放置することの危険性、そして対策方法などもまとめました。
回収を終えていない債権のうち、約束の期日を過ぎても取引相手からの入金がない債権のことを、滞留債権といいます。基本的には「入金が遅れてはいるが、回収自体は不可能ではない」と見込まれる場合に、滞留債権の扱いになります。
また、未入金の状態が長期間続いている債権のことを、長期滞留債権といいます。長期間か否かの判断基準は企業ごとに異なりますが、未入金の期間が期日から6ヵ月以上にわたるものを、長期滞留債権とする場合が多いです。
滞留債権と混同されやすい債権のひとつに「不良債権」があります。不良債権も滞留債権と同様、何らかの事情により期日までに入金がなされていない債権のことです。
滞留債権との違いは何かというと、回収可能性です。不良債権は、基本的には今後も回収を見込めないと予想される債権です。ここが、回収の可能性を残している滞留債権との大きな相違点です。
滞留債権は、どのような原因によって生じるのでしょうか。取引相手に問題があるケースと自社に問題があるケースについて、それぞれまとめました。
よくある原因として挙げられるのは、経営悪化による苦しい資金繰りです。ただし、それ以外にもクレームによる未払いや未検収などをはじめとする人為的なミスによる未入金の可能性もあります。特に、多数の取引の管理を人がエクセルで行っている場合は、うっかりミスが起こりやすいです。
月次の締め切りが、出荷と検収の間にはさまることが原因となっている可能性もあります。その場合、切り替わりや返品・値引きの未修正、売上計上の間違いなどの未収売掛金が生じていると考えられます。
また、営業担当者と経理担当者の間のコミュニケーションが不充分である場合も、滞留債権が起こりやすいです。他にも、請求漏れや回収金の消込不備など、複数の要因が挙げられます。
滞留債権の速やかな回収に注力せず、そのままにしておくと、次のようなダメージを負うリスクが高まります。
売掛金が回収不能になった場合、それを売上によってではなく、利益によって埋め合わせなくてはなりません。そうなると、損失分の額面金額から受けるイメージよりもはるかに大きな労力が求められます。滞留債権が、次のいずれかの状態になったとき、損失として経営にダメージを与えることになります。
債権が消滅する「消滅時効」が民法で定められています。一度時効が成立してしまうと、それを覆すことは不可能です。回収できなかった滞留債権は損失扱いになってしまうのです。そういった事態に陥るのを回避するには、消滅時効の成立を防ぐために催告などの働きかけを継続的に行う必要があります。
債権が回収不能になることを「貸倒れ」といいます。回収できなかった債権は「貸倒れ損失」として計上され、そのまま損失になります。貸倒れ損失は損金として算入されるので、消費税額控除の対象となります。貸倒れ損失として安易に計上するのではなく、債権の状況をふまえ、処理するタイミングに応じて適切な損金経理を行うことが大切です。
貸倒れが起こった場合、被害を受けた側である自社としては、支払い不能になった取引先企業が全面的に悪いと考えたくなります。けれども、社会的にはそのようには評価されません。
「貸倒れリスクのある取引をしてしまった企業」「代金支払いの時効成立まで逃げ切れる企業」といったような信用リスクがついてしまう場合が多いです。信用リスクは、会社を経営する上での大きな足かせになります。
滞留債権の発生を防ぐために講じるべき対策をまとめました。
債権管理に関する社内ルールが適切に構築されていないと、未回収の債権が増えていきます。ルールや管理方法に問題がないかどうか、定期的に見直しを行うことが重要です。債権の回収が不可能な状態になり、貸し倒れが起こったり債権が消滅したりしてからでは、手の打ちようがありません。
すべての取り引き先の債権管理を徹底し、それぞれの売掛金額や入金期日、返済の滞りの有無などについて、常に目を光らせておきましょう。元帳とは別に売掛金管理簿を作成し、把握しやすい状態にしておくことをおすすめします。
受注した時点では、まだ商品の代金を受け取っているわけではないため、取引が成立した状態であるとはいえません。受注獲得数に気をとられるあまり、売掛金の回収を怠ってしまうことのないよう注意しましょう。そのためにも、営業部門から独立した形で、充分な与信管理を行えるようにする体制を整えておくことが求められます。
アナログ的な方法で滞留債権などを管理しようとすると、どうしても人為的なミスが起こりやすくなります。そういったミスを防ぐため、債権管理システムの導入を検討してもよいでしょう。請求や入金に関わる情報を自動入力できるようになるだけでなく、期日や遅延のアラート管理、入金消込などを効率化できる機能が搭載されたシステムもあります。
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